周辺の雑木林が春めいてくると、友野園がにわかに慌ただしくなります。
狭山地域では、ちょうど春のお彼岸の頃、「刈りナラシ」と呼ばれる作業を行います。
これは、機械適採する茶樹の表面を、新芽が伸びるために必要な葉層だけを残しつつ、前年の晩秋までに伸びた枝葉を、最適な高さに整える、という作業です。そのためにそれぞれの樹の成長の度合いや、個性など確かめながら進めていきます。
刈りナラシが終わると、次は、肥料を与えなければなりません。
年間の茶樹の栄養吸収は大きくは3回あり、前年秋に年間肥料の1/3を与え、春にも同様に年間料の1/3を与えます。それで残りの1/3はといえば、吸収しきれなかった残留栄養素が、1年間の総量の肥料分としてゆっくりと茶樹に吸収されてゆき、きっちりと帳尻が合うのです。二番茶前や夏にも、芽出し肥を与えたりしますが、いずれもわずかな量です。とくに友野園では、手間がかかるようであっても、春肥を4回に分けて、根を傷めないよう、注意深く撒いていきます。
なお春の一番茶シーズンには、害虫などが発生しないため、防除は一切行っていません。
当園では、多角的で総合的な方法により、人や環境へのリスクを抑えた防除(総合的な病害虫・雑草などの防除管理=IPM)を実行しています。
……もうそろそろ、雑木林の林床では、カタクリやシュンランなどが可憐な花を開きはじめる時季でしょうか。狭山丘陵を中心とした地域の里山が、友野園のお茶の故郷です。
春の畑作業の手を休め、家族みんなで味わう一服に、手前味噌ですが、あぁ、ウマいよなぁ、と、今日もしみじみ感じられることに、感謝しています。