新茶も、生粋の自家生産

新茶

旬とは、古代、朝廷で行われていた年中行事のひとつだったそうです。

それが時代とともに、様式や姿を変えて世の中に浸透し、今では、旬といえば、真っ先に食が浮かびます。野菜や果物、魚介など、味の最もよい時季を知って食すのは、日本人ばかりではありません。とに季節の移ろいまでも一緒に感じて味わうのが、私たち日本人の喜びにつながっているような気がします。

そして当園の茶園にも、また一番茶の季節が巡ってきました。この春に芽吹いたばかりの、まるでメジロの羽のように淡い緑の、つやつやとした柔らかい若葉を、家族総出で摘み取ります。

摘んだ生葉は、そのままにすると発酵が進むために、素早く蒸します。その後、熱風をあてながら揉んで、冷まし、また揉みながら乾かし……を繰り返すことで、茶の葉はだんだん細長くなり、整ってきます。そうして乾燥と揉捻のプロセスを反復しできたものを荒茶と呼んでいます。

同じ荒茶でも、樹種によっては風味が異なり、圃場の環境によっても違ってきます。次に、そうした荒茶を選別し、ブレンドしてお茶として仕上げるのが、生産・製造者としての、ひとつの腕の見せどころでもあります。

ブレンドとはいっても、友野園で作るお茶は、これまでも、これからも、100%自家生産の茶葉だけを用いてずっと作り続けてきました。混じりっけなく、当園で育った茶葉だけを組み合わせ、うま味や香りが最良に引き立つように加工し、作ってきたのです。

さて、このところお問い合わせが増えている今年の新茶の作況はといえば、皆さまのご期待に沿えるものとなりました。どうやら、昨年からの肥料の吸い上げが功奏し、爽やかな甘みの合間には、品のよい、しっかりしたうま味が感じられ、また、新茶に特有の香りも心地よく仕上がっていると、自負しております。

出来たての新茶を、ひと口、口に含んでみると、あぁ、美味い。これが旬の味わいだなぁ、と、嬉しくなり、園主としては少しだけ報われるようで、また謙虚に、天恵に深く頭(こうべ)を垂れる思いです。

どうぞ今年の新茶を、生粋の、友野園の旬をご賞味、ご堪能下さい。