狭山の「茶樹王」

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茶畑の上をさわと流れる風に、ほんわり温みが感じられるようになってきました。

いつも植物たちに寄り添い、ともにある暮らしをしているせいでしょうか、足許に咲く野の草花や、雑木林の枝葉の伸長にも、なんとはなしに気が傾きます。

今日は、当園周辺の丘の繁みの奥から、お世辞にも巧いとはいえないウグイスのさえずりが聞こえて来ました。美しく響き渡るように啼けるまでには、しばらくの鍛錬が必要なようです。今年も、そんな時季になりました。

鶯のだまって聞くや茶つみ唄  一茶

つい先ほどまでは、昨年、改植した茶樹の手入れをしていました。どうやら根もすっかりと定着し、健康的な成葉もついていて、順調に育っているようです。

ところで、日本における茶の樹の経済寿命は、一般的には30年から50年ほどといわれています。ですが中国・雲南省などでは事情もかなり異なり、老古木や巨大な茶樹も多く残っているようです。伝説では、三国時代の武将・諸葛孔明(181年−234年)が植えたといわれる「茶樹王」と呼ばれる巨樹もあるのだとか。

もしそれが本当なら、樹齢は1800年ほど、になります。まぁ、それは大げさだとしても、実際には、数百年間を生きてきた茶樹が、青々と葉をつけているともいいますし、樹高が5メートルほどの樹も稀でなく、たくさんあるらしいのです。そしてそんな樹々の分布は、ベトナムからミャンマーにまで連なっているのです。もちろん、日本とは気候も生育環境もかなり違っています。

さて、これから春肥を行う予定です。友野園では、春の施肥を4回ほどに分けて、注意深く行うのが定石です。手間の掛かる作業にはなりますが、根を傷めないためにはそうするのがいいと定めて、続けています。美味しいお茶を作るという意味での、狭山の「茶樹王」を育てる気概なのです。