茶壺のなかの味

新茶

ずいずいずっころばし、ごまみそずい……♪

……と、はじまる、よく知られた童謡があります。

そして続いて、ちゃつぼにおわれてとっぴんしゃん、ぬけたら、どんどこしょ、と歌われます。

この歌詞の意味には、有力な説としては、江戸時代のお茶壺道中の際の、庶民の様子を歌にしたもの、といわれます。お茶壺道中とは、江戸の将軍にお茶を献上するために、茶葉(抹茶にするための碾茶)を壺に入れて運んだ、一種の大名行列のようなものをいうのだそうです。

同じ江戸時代に、野々村仁清(ののむら・にんせい 生没年不詳、17世紀に活動)という陶工が、京都にいました。

とくに茶入、茶碗、香炉などの茶道具類に傑作を残し、現存する作品は国宝や重要美術品に数多く指定されるなど、日本の近世を代表する色絵陶器の名匠です。

なかでもとくに、仁清によって作られた茶壺は、色絵の美しさはもちろんのこと、造形としては、高さが30センチ近くもあり、また壺の肩には4つの耳がつけられていて、なんとも堂々とした作域です。

将軍への献上品のお茶なのですから、そのような立派な壺に入れられ、運ばれていたのでしょうが、では、その中身の茶葉は、一体、どんな味だったのでしょう……。

緩やかな風が吹き抜けて、流れ、波打つ青い茶畑を眺めながら、かつて作られていたお茶の味わいに、ふと、思いを寄せてみることもあります。

今年も、友野園の茶の樹たちは、どうやら、力一杯、根を張って踏ん張り、健やかに葉々を伸ばそうとしています。日々の手作業に、やり甲斐を感じる季節です。