気ままな天変に抜かりなく ……春の作業2

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行きつ戻りつしながら、春はゆっくりと深まって来ます。

暦のうえでは春とはいっても、放射冷却などの気象条件に影響され、茶畑にはまだ霜の降りる朝もあるのです。芽吹いたばかりの、柔らかく、繊細な茶の新芽を、「遅霜」から守ってやらなければなりません。

冬を越えて、やっと芽吹きはじめたばかりの茶の新芽たちは、多くの水分を含んでいるために、もし霜に焼けるようなことがあれば、一番茶の収穫は厳しくなります。うま味の詰まった新茶が、味わえないのです。そのことは生産者にとって、大変な試練です。

そこで現在では、茶畑に適度な間隔を置いて支柱を立て、大きな首振り扇風機(防霜ファン)を備えつけ、霜への用心と対策をしています。

例年、3月中旬頃から摘採の終了までの、このファンのスイッチを入れておき、早朝から陽が昇って来る間、地上5~8メートル付近にある比較的に暖かな空気の層を、茶株面に向けて吹き付けて霜よけを行っています。

このように遅霜への対処をしながら、この時季には、被覆栽培も併行して行います。

茶樹に、寒冷紗など細かな網目状の化学繊維の資材を被せて覆い、直射日光の当たる量を抑える栽培法です。そうすることで、葉緑素が増えて(緑色が濃く)、葉にはアミノ酸やテアニンが多く含まれるようになります。そうする一番の目的は、品質のとくに優れた上級茶を作ることです。渋みや苦みがほどよく抑えられ、そうありながら、甘みやうま味が際立った友野園の、看板に恥じない芳潤な、味わい深い高級煎茶が得られます。

こうして我が家では、格別な恵みを得るために、気ままな天変や自然の移ろいに対処しながらも、しかし実直に、手抜かりなく、丁寧に、茶樹の世話をしよう、といつも銘じて、春の茶園での作業をひもすがら続けているのです。